7月21日の『スター・レッド』感想日記の続き。
火星人=火星に適応して超能力をもつようになった種族。 もと地球人。
彼らは世代を経るごとに、その能力を増していく。
ほとんどが第三世代と第四世代。 シラサギとヨダカは第三世代。
黒羽は第四世代。 セイは第五世代。
☆ 以下の「 」内の言葉は、萩尾望都『スター・レッド』より
<女は度胸──黒羽> 喜怒哀楽が激しくて、ストレート。
度胸がすわり、どんな相手だろうが物怖じせず、はっきり物を言い、
どんどん行動し、恐れを乗り越え、立ち向かっていく…、
尻込みなんてしない。 無鉄砲なくらい。
執着せず、あっさり、さっぱり、でも熱い。
子どもを作る機能がなく、男として生きてる。
生粋の戦士で男と対等。 火星の一族も対等に扱っていた。
自分のことをオレと言い、表面的には女を感じさせない。
…それが黒羽。 私は、スター・レッドの中では、黒羽が一番好きだ。
学生の頃は、全く意識してなかったけど、
今は、読むたびに黒羽に惹かれていく。
……私が目指してきた、憧れのタイプだからかなぁ。
学生の頃までは、私は黒羽と逆のタイプだった。
でも、幼い頃から抑圧してきた本来の自分が
少しずつ解放され、抑圧に伴う感情の麻痺もとれてくると、
本来の私は黒羽に近いタイプだと気づいた。
もちろん、黒羽の度胸には及ばないけど。
……私の夢だった生き方をしてるせいかなぁ。
結婚せず、子どもをつくらず、キャリアウーマンとして、
一生、男の人と対等に働いていたかったけど、
強迫でおじゃんになった。
結婚しないっていう、子どもの頃からの誓いを破ったせいで、
強迫も急激に悪化したんだから、自業自得か…。
やっぱ、私には度胸が足りなかったなぁ。
……私の中に、女への拒否が残ってるのかもしれないなぁ。
黒羽は、男として生きてるからなぁ。
でも、黒羽はそれを自分で選んだわけじゃない。
子どもを産まないんじゃなくて、産めないのだから。
そんな火星人の女は、第一の戦士になることになってる。
望んだ生き方じゃないのかもしれない。
でも、黒羽はその運命を受け入れ、
いつも、火星の一族を命をかけて守ろうとする。
黒羽は一族の意志を受け、
「災い」と予言されたセイを追ってきた。
黒羽は、精神波で無数の激しいカマイタチを起こし、風を裂く。
黒羽は第四世代。
能力の大きい第五世代のセイは、
黒羽の精神波を寸でのとこで、避け、避け、避け、避け…、
そして突然、黒羽の懐近くに飛び込む。
そこで風を裂いたら、黒羽も巻き込まれるから
裂けないだろうと考えて。
でも、黒羽は迷わず風を裂く。
自分もきっと死ぬ…、承知の上で風を裂く。
一族を少しでも災いから守ろうとして。 第五世代の能力で、その場をなんとか逃れたセイが、
まだ息のある黒羽に気づき、助けなかったら、
黒羽は死ぬとこだった。
黒羽は借りを返してから、セイを狙うことにする。
セイが地球人の火星人排斥者に捕らえられ、
調査のために地球に送られることを知り、
黒羽は「それも災いだ! とりもどさねば!」と
ヨダカに協力をもちかけ、セイを追って地球まで行く。
排斥者は、火星人の弱点を調べるつもりだった。
黒羽は、
一族にとって何が「災い」となるか、
いつも真っ先に考えてる…。
地球に現れたミュージュに出会った黒羽は、
ミュージュが異星人だと気づく。
ミュージュの言動から、災いへのつながりを感じ、セイとのケリより先に、ミュージュとのカタを
つけることにする。
ゼスヌセルへ帰ろうとするミュージュを
逃すまいと、ミュージュのマシンを壊そうとした黒羽は、
そのとき一緒にいた、ミュージュ、セイ、エルグ、サンシャイン、
源、カッパとともに、空間を越えてゼスヌセルまで
一緒にマシンで来てしまう。
ゼスヌセルの異星人たちは、
文化人らしく話し合おうと言いながら、
アミの巣の火星を始末し、火星人の超能力を封印するために、
黒羽やセイたちを、うまく言いくるめようと思っていた。
火星人は他人の心が読めるんだけど、
言語が違う異星人の心の中は、火星人にとって、
意味のとれないシグナルだらけで、読むことができない。
でも、
黒羽は彼らの目から、彼らが超能力者を排斥しようと
しているのを感じとる。 異星人の委員長に
凄い勢いで迫った黒羽は、「さあ上品ぶるのやめて、そのハラぶちまけな!」と、さらに迫り、
彼らの本音をほぼ聞き出す。 「夢見たちは災いがくると言っていたが」
「エルグとおまえの背後にあった、
この星の連中が真の災いだったんだ!」
黒羽がセイに言う。
セイは、古代の人々が
アミを呼び寄せたのなら、
もう一度、追い払えないかと考え、エルグにアミが最初に来た
古代の惑星ネクラ・パスタに行ってみたいと言い出す。
エルグはあそこは危険だし、なにも見つかるものはない、
立ち入り禁止区域だ…としぶる。
「のった!」
「その古代の星の旅にのるぜ!」
突然、黒羽の声がする。 セイとエルグを探していた黒羽たち4人は、
二人の話をいつの間にか聞いていて、黒羽もエルグを促す。
ネクラ・パスタは、周りの4つの人工衛星から張られた
4つのバリヤーに囲まれ、封鎖されている。
エルグは、その4つのバリヤーを同時に一瞬切って、
セイとエルグが星にテレポートし、一時間後にまた、
バリヤーを一瞬切って、戻ってくることにする。
そのために、バリヤーのポイントの4つの人工衛星に、
他の者が分かれて待機し、タイミングを合わせて
同時にバリヤーを切ることになる。
セイとエルグが星にテレポートして、20分も経たないうちに、
ゼスヌセルの委員会に見つかってしまい、
それぞれの人工衛星に、順にミュージュたちがやって来る。
「はむかえば、この場で処刑する」というミュージュに、
他の者は従ったが、黒羽は一人はむかって殺されてしまう。
火星と火星人の運命を、セイとエルグに託したからには、
ゼスヌセルの異星人に邪魔させまいと、
黒羽は、またも命をかけた。最後の最後まで、
黒羽は火星の一族を全力で守ろうとした。
子どもを作る機能が普通にあれば、
黒羽は、女として生きたかったかもしれない。
男として生きるのは、
望んだ生き方じゃなかったかもしれない。男として生きる女は、普通の男とも女とも違い、
孤独な立場になる。
でも、黒羽はその運命を受け入れ、覚悟を決め、誇りをもち、
火星の一族をいつも命をかけて守ろうとし、
最後までそれを全うした…。
その生き方に力強さを感じる…。
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