6月8日の『スター・レッド』日記の続き
<危険な要素と救いの要素を併せもつ、両刃の刃> アミ =古代のある種族の異星人が、異次元から呼び寄せた
形のない巨大な超精神生命体。 赤色螢星に巣くって魔の星にする。
魔の星では、大きなパワーの超能力を持つ種が誕生することがある。
その種は、世代を経るごとに超能力のパワーを増していくが、
その星に住み続けていると、いずれ夢魔にとりつかれてしまう。
☆ 以下の「 」内の言葉は、
萩尾望都『スター・レッド』より
火星の“夢見たち”のつえが鳴る。
彼らの精神波が1つの未来を予知し、つえが共鳴する。
「災いの月がのぼる」
シラサギが、ひとり共鳴からはずれる。 異なる夢をみる。
「それをふせぐことはできる」…シラサギ
「ふせぐことはできない」…他の夢見たち
「すべがある」…シラサギ
「すべはない」…他の夢見たち
…果たして、すべはあったんだろうか。
魔の星、火星は砕かれた。
でも、火星人は“調整”されずにすんだ。
ゼスヌセルの異星人から、超能力を封じられることは防げた。
でも、もともと“調整”なんて必要ない。 火星がなくなるのなら。
だって、それ以上、魔は進行しないのだから。
なぜ、調整なんかしようとする?
高等な種のつもりでいる
あの異星人たちは、超能力者をおそれている?
「忌むべき存在」「世界をよりよく保つ」なんて言いながら。
そして、
火星や火星人を「あるべらかざる」って? そんなこと決めつけられない。
生まれてきた意味、存在している意味など、わからないのだから。
「なんらかの答えを用意することはできる」
「でも、本当の意味など、だれも知らない」…エルグ
異星人たちは、都合のいい意味づけをしてるだけ。
人はみな、そうだろうけど、
そのことを自覚してるかどうかで、違ってくると思う。
意味なんて
相対的なもの、真実なんて
人の数だけある、っていうことを。
アミが巣くう赤い魔の星に住む
超能力を持つ種、たとえば火星人、
彼らの超能力の大きなパワーは、両刃の刃。 きっと。
自らを滅ぼすほどの危険な要素と、
奇跡をおこせる素晴らしい要素を併せ持ってる。 きっと。 確かに危険の方が大きい。
夢魔は、人の心の産物なのだから。
夢魔とは、嵐のように押しよせる影、
憎しみ合い、殺し合い、食い合う、精神エネルギー。 その影を見た者たちは、夢魔にとりつかれ、
精神のコントロールがきかなくなり、滅ぼし合う。
…あれじゃ、エルグは救われないと思ってたけど、
本当は、エルグは救われたのかもしれない。自分で自分を救ったのかも。
セイを愛する強い想いで。
エルグの星もアミの巣だったので、
エルグも火星人のような超能力の種だった。
ゼスヌセルの異星人によって、危険なテレパシー能力を封じられ、
自らも、その封印を解こうとはしなかった。
他人の精神をまさぐる方がおそろしい…と。
そうかもしれない。 でも、それだけじゃなく、
自分自身をおそれているとこがあった。
火星の未来の精神荒廃を避けようとして行った、
アミが巣くう元になった古代の惑星、死んだ惑星ネクラ・パスタで、
セイを失ったエルグ。 そして…。
「セイ…、おまえを愛している」
「ぼくは今から、くるうことにする」
「ぼくの精神を封じてきたいましめを、今とくことにする」
「惑星の共鳴がぼくをつかまえ、ひきこむにまかせよう」
「ぼくがおそれていた、無、暗黒、狂気へ」
その惑星で、テレパシー能力を解放すると、
惑星の共鳴につかまり、引き込まれてしまう。
「存在していれば、なにかが見つかるかもしれないと思った」
「そして、きみに出会った」
「一つの星、一つの運命に恋している少女」
「きみを独り占めし、数千年の孤独をすべてうめたかった」
「…セイ、きみを心から大切に思う」
「…心からだ…」
封印を解き、精神を解放したエルグは、
セイへの、ありったけの想いを世界に放つ。
「この惑星のどこかにいるのなら…」
「また、この宇宙のどこかにいるのなら…」
「うけとっておくれ」
「ぼくは──すべての柱に地に──、きざみこむ」
「──きみを愛していると」
エルグはその能力で、魔の惑星に刻み込む。
夢魔のエネルギーと逆のエネルギーを。
愛し合い、許し合い、与え合う、精神エネルギー。
「セイ、きみを愛している…」
「──ぼくは、美しい星に住む美しい生命でありたかった」
「セイ、きみを愛している…」
「──ぼくは、祝福されて光と水の中にいつまでもいたかった」
「きみを愛している…」
そして、遠い未来、
その惑星は息を吹き返す。 水が流れ、芝草が茂る。
人は生を受けた途端、死という終末へ歩き出す。
不安な生き物。 だから、負のエネルギーの方が強いのかも。憎しみ合い、殺し合い、食い合う、精神エネルギーの方が、
愛し合い、許し合い、与え合う、精神エネルギーよりも。
でも、エルグは死?を目前にしながらも、
愛の方のエネルギーを心に満たし、世界へ拡げようとした。
あの愛のエネルギーが、
アミの負のエネルギーを逆のエネルギーに変化させたのか?両刃の刃の、良い方・弱い方の側面がまさったのか?
シラサギの言う「すべ」があったということか?
少なくとも、惑星ネクラ・パスタのアミを変えたのか?
それは希望、そして証明。 …「あるべからざる」ではない、という。 深夜.24:27